事例紹介

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法定地上権に関する当事務所の取り組み

  1. 事案の概要
    本件は、依頼者が二筆の土地と同土地上の建物を相続し、土地についてだけが競売された事案である。建物は競売されていないことから、建物について法定地上権が発生するか否かが争点となった。建物は、相続人の祖父が建築したもので、祖父は、当該土地の共有持分の僅かな部分を子や孫に贈与しており、上記競売にかかる抵当権のほかにも複数の抵当権や根抵当権が設定されていたが、その一部は解除され、建物は区分所有建物として登記されている。
    このような状況の下で、建物に法定地上権が認められるか否か。
  2. 当事務所の立ち位置
    当事務所は,上記建物の相続人から委任を受けたものであり、土地の競落人との間で法定地上権の成否について争った。土地と建物が同一の所有者である場合には法定地上権が成立するとされているが、土地ないし建物が共有とされている場合には法定地上権が成立するか否か、また、建物が区分所有建物とされている場合にも法定地上権が成立するか否かが争われており、判例学説上も統一した見解が得られていない。
    また、法定地上権の成否について判断する資料は、競売記録等に基づく事実でなければならないとされていることから、可能な限り競売記録等を精査し、関係する判例学説を調査して、法定地上権の成立を主張した。
  3. 当事務所の見解
    競売の基礎となる担保権の設定時期に建物と土地とが同一人に帰属している場合に法定地上権が成立するとされているが、最判(最高裁判所による判決)によれば、同一人が建物と土地を所有していたと言えるか否かは、実行された担保権の設定された時点で同一の所有か否かを判断するとされている。一方、本件では、祖父が土地建物を所有しているときに担保権を設定しているが、建物の登記が存在せず、建築中であったと思われる。しかし、最判によれば、建設中であっても、土地建物の所有者が同一人物であれば、法定地上権が成立するとされており、本件はその時点で、子や孫に土地の共有持分を贈与している。受贈者である子や孫が祖父の担保権の設定に同意していたと言えるか否かは、祖父が共有持分を贈与した後に、完成した建物に居住していることや、他の担保権の設定の際の子や孫の動向などから、担保権設定に対する承諾があったとして立証した。
    裁判所は、法定地上権の成否について明確な判断を避け、両者の利益を調整して和解を強く勧告した。
  4. その他
    不動産をローンで購入された方はもちろん、集合住宅を建てて賃貸された方においても、当該不動産を売却したり、相続させたりする場合には、法定地上権の成否が経済価値を大きく左右するので、担保権の設定やローンの借り入れについては、不動産に関する十分な知識経験を有する弁護士に相談することをお勧めする。

栄総合法律事務所

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